Miyagi Siroisi River

結城 賢二

2017年09月07日 00:07

【秋の足音、稲穂の香り、秋色ヤマメ】




日が落ちるのが早くなった。

夏が過ぎ去るのを感じる。

8月も残り数日。

僕は、遅い夏休みを故郷の東北で過ごしていた。

仙台湾のワラサのジギングや

キャスティングゲームも考えていたが、

残念ながらスケジュールが合わずに断念。

ならば、シーズン終盤を迎える渓へ向かう事にした。

しかし、8月からの長雨の影響で、出発当日は、

増水して、とても釣りが出来る状況では無いとの事だった。

「今年は、釣りをしないで終わるのか」

諦めていたが、念の為に、タックルだけは積み込み

のんびり下道で帰省する事にした。

片道9時間のドライブ。

二十代の頃はよく、お金も無く

夏になるとバイクで帰省したものだ。

高速なら5時間程、時間の無駄かもしれないが、

久しぶりの下道は案外、色々な発見やお店に寄り道が出来て楽しい。

そして何よりも山の香り、稲穂の香りを、体いっぱいに感じる事が出来る。

アキアカネが田園に飛び交い、東北には初秋が訪れていた。




お土産を買いつつ、

河川の状況を確認しながら北上するが、どの河川も水量は多かった。

この日はロッドを振ることなく終わる。

翌日も晴れ。

三日目の晴れという事で、水量も下がるかもしれない。

一か八かで4年振りになる渓へ向かう。

下流部は、いまだに増水し

とても釣りが出来る状況ではない。

目的のダム上流部に向かうと、力強い流れと水量そして笹濁り

しかし水量は、峠を越して下がっている。




釣りが出来ないと言う程の濁りと流れではない。

逸る気持ちを抑えながら、入渓の準備をする。

8月下旬の渓。

それにしても、まだまだ東北の渓には、

人間にとっては、厄介なアブが多かった。

車を停めれば、排気ガスの二酸化炭素に反応して

アブの群れに囲まれる。

お盆時期のように、人柱になるほどのアブの数ではないが、

いつになっても、あの大きさと顔と羽音といい、

そして噛まれた時の激痛。

アブは大嫌いだ。

しかしそのお蔭で、フィールドが守られているのは事実。

だからこそ東北の渓は豊に育つ。

渓相は、石灰質の一枚岩が連なる。




深呼吸をして釣りを開始。

2キャスト3キャスト。

攻め甲斐のある流れとポイント。

トゥイッチする手首が止まる。

「あれ、根掛かりか?」

Lパワーのロッドが、弧を描き魚が下流に猛ダッシュ。

これは、まずい。

自分も下流に移動しながら、魚を誘導する。

「デカい」

なかなか弱らない。

手に汗握る攻防とは、よく言ったものだ。

数回の強烈な走りをなんと交わし、誘導すると

溜息が出る程美しい東北の美ヤマメだった。




体高があり、傷が一つない、ほんのり秋色めいた姿。

時間を忘れて僕はシャッターを切る。

尾の力強さ。




これが釣りたかった。

釣りをする事自体、諦めていたし、この一匹との出会いで

片道9時間のドライブの疲れなんて

一瞬で吹き飛んでしまう。




開始20分程で僕の心は、満たされた。




まだまだ時間はある。

4年振り訪れるフィールドをゆっくりと歩く事にした。

歩けば歩くほど、関東では釣るのが難しい

20cm前後のヤマメが、適度に釣れて楽しませてくれる。

東北の渓は、プレッシャーと言う言葉をしらないんだろうか?

そんな事を思う程。

ここぞと、言うポイントをトレースすると

「ドス」っと重い衝撃が手に伝わる。

一気に走る魚。

太い流れを力強く泳ぎ、ロッドが引き込まれる。

良型のヤマメとの駆け引きは痺れる程。

無事に浅瀬に誘導すると、




この色と顔付きに自然に笑みがこぼれる

「ちょっと今日は、出来過ぎじゃないか?」




誰も居ない渓で吠えてみたりして。

それ程に嬉しい嬉しい一匹との出会い。

呼吸を整える姿を時が忘れる程見ていた。




「バイバイ」とゆっくり帰っていく姿を見て

僕は、上流の支流へ足を延ばした。

水量も落ち着き、水色もいいのだが、

歩いても歩いても、魚の姿は見えなかった。

体力もそろそろ限界。

もう帰路へ向かってもよかったが、再度増水の渓へ

入渓するポイントを何度か回るが、増水の影響で釣り場が限られる。

そんな事を数回繰り返し、やっと入渓。

「ここで終わりにしよう」と決めた。

ヤマメのチェイスや小型を数匹釣りながら、

最後のポイントを楽しんでいると

本日、三度目の強烈なアタックと同時に、ベンドカーブを描くロッド。

「頼む、頼む」と心の中で言いながら、笑顔で楽しむ僕。

キャッチしたのは、太く体高がある美しいヤマメ。




関東で釣れるヤマメとは、明らかに違う。




野性味溢れた顔つきと、輝く程に美しい模様。




手から離れていくヤマメ。

そして一息つく僕。

心から良い釣りが出来た。

日頃のストレス全てが体全体から

抜けて行った気がした。




「ありがとう」と渓に挨拶をして釣りを終わらせた。




故郷を離れて初めて分かる、

フィールドの豊かさ。

東北は大好きだ。

お寿司に刺身、殻付きの雲丹に初秋刀魚。

母親が作る芋煮も美味しかった。

心も体もリフレッシュ。

あっと言う間の3日間を過ごして

後ろ髪を引かれる思いで初秋の東北を後にし

僕は、相模湾へ

シーズンラストの湾マグ釣行へ向かうのだった。




また帰ってくるよ東北へ。

-TACKLE DATA -

Rod: SOULS / TROUT FINALIST EXPLORER 50LS Ver2
Reel: SHIMANO / TWINPOWER 2000HGS×わたらせ樹脂工房 楓瘤
Line: APPLAUD / GT-R Trout Edition 4LB
Lure: Buddy 50s.Rough Stream Minnow50.Matt Homura50s.Spino Minnow fat50s.slim50s.・・etc



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